蘇る夢の島



 平成5年7月12日午後10時17分、わが奥尻町は北海道南西沖地震 ならびに
その直後に発生した大津波に襲われ、壊滅的ともいえる被害をこうむりました。

 マグニチュード7.8という、日本海側における観測史上最大の地震であったのも
さることながら、その震源の浅さや周辺震源域の広さ、奥尻周囲の海底地形の
特異性などさまざまな条件が重なり、大災害となりました。

 この震災における被害の状況は人的被害、死者172名、行方不明26名、
重軽傷者143名におよび、被害総額は約664億円にも達しました。

 人口わずか4,000人半ばの島にあり、町の年間予算規模約50億円のひ弱な
財政基盤からして、自然がもたらしたこの震災に対しての復旧・復興対策は余りにも
大きいものであります。

 悪夢のようなその北海道南西沖地震から早2年と8か月……。奥尻島は今、
災害の傷から雄々しく立ち上がろうと懸命の努力を続けております。

 震災直後より次々と救援に駆けつけてくださった各救助機関ならびに企業・
民間団体のみなさま、わが身の労力をいとわず懸命のサポートを続けてくださった
ボランティアのみなさま、そして、全国から寄せられた多額の義援金と膨大な量の
義援物資の数々……。

 いったんは完膚無きまでにたたきのめされた奥尻が、災害に強い豊かさを実感
できる新しいまちづくりのための工事を展開中であり、被災時からすると街の
様相も大きく変わって参りました。これも国、道などのご理解と全国津々浦々からの
物心両面のご厚情の賜物と思っております。

 本書は、復興途上にある奥尻島の姿と、みなさまから戴いた義援金の
収支決算報告を兼ねつつ作成した報告書であり、この未曾有の災害を奥尻の
歴史に未来永劫、しっかり刻み込んでおくための記録書でもあります。

 本来なら、震災から復旧・復興についてもう少し早い機会に本書を作成すべきで
ありますが、かつて、私たちが経験だにしない震災のため復旧から復興へと
今日まで山積みされた課題解決に取り組んで参ったのが実情であります。

 こうしたなかにあって、昨年夏には犠牲者の方々の3回忌も無事終わり、
長い間不便な仮設住宅暮らしを余儀なくされていた住民のみなさんも、この夏には
それぞれが新居を構え、足並み揃えての新生活をスタートする目算が立ちました。
今この時期に至り、ようやく本書を刊行することになりました。

 北海道南西沖地震という未曾有の大災害を経験した私たち奥尻町民にとって、
現在進めているこの震災に強い新しいまちづくりを完遂することは、多くの尊い
犠牲者の方々に対する最大の鎮魂であり、多大なご支援を戴いた全国のみなさま
への唯一のご報恩だと考えます。

 どうかこれからも、私たちの“新しい奥尻のまちづくり”にご注目ください。
そして、“新生”なりつつある奥尻に、機会がございましたらぜひ足をお運び
戴きたいと思います。
                            平成8年3月



 北海道南西沖地震・災害の爪痕 
原因はいまだに判明していないが、一晩中燃え続けた火災で
青苗の被害はより一層広がった。青苗の下町地区は、すべて灰燼に帰した。

[海上保安庁提供]



       

奥尻町”今”
[奥尻観光協会]



● ご意見・ご感想をお寄せ下さい。●
info@kouiki.hiyama.or.jp
  参考資料:北海道奥尻町発行 「北海道南西沖地震 奥尻町記録」
                            「蘇る夢の島!」−北海道南西沖地震災害と復興の概要−

        北海道南西沖地震記録作成委員会発行 「北海道南西沖地震記録書」
発行日 :1996年3月